主人公「藍澤 清(あいざわ きよし)」とその隣の家に住む少女……「華月 光(かづき ひかり)」は幼なじみの同級生。二人はお互い相手の存在を気にしてはいるものの、なかなか次のステップを踏み出せないでいる微妙な状態にありました。
ある日の朝、いつものように藍澤は自転車の荷台に華月を乗せて学校に向かいました。
けれど――。
その日だけは、「いつものように」学校に着くことができませんでした。
トラックのわき見運転により、自転車が車に巻き込まれてしまったのです。
事故の結果。
藍澤、車の運転手は奇跡的に無傷……ですが――藍澤はそれを素直に喜ぶことはできません。
華月が、他界してしまったのです。
それから数日後。
藍澤は未だに「華月が失われた」という実感を持てないままでいました。
それは
突然の事故でした。
病室で目が覚めたら華月が他界したという話を聞きました。
けれど、「それ」だけなのです。ただその一言だけで、彼女はこの世界から居なくなった、というのです。
「一体どうして、おれはアイツを無くしたっていうのに、こんなに平気でいられるんだろう?」
主人公にとって、ここ数日に起きた出来事は、まるで夢の中の出来事のような感覚しか沸かないものでした。
ため息をつきつつ、窓から隣の……誰もいない部屋を眺めたときです。
?「な〜に、ため息なんてついちゃってるのよ?」
ふいに後ろから声が聞こえました。
驚いて声の方を振り返ると、そこには華月がベッドの上にちょこんと座っています。
「な…… ? 」
*「相変わらず、汚い部屋だねぇ、ココ」
「な、なん……ど……どうして……な、なんでオマエが、そこに居るんだよ!?」
*「って言われてもねぇ。私も信じらんないんだけど……」
他界したはずの華月が、ベッドの上にいるのです !
しかも、華月は――手のひらを少し広げて横に並べた程の大きさ――25,6 cm の、まるで人形の様なミニマムサイズ。
「こんな……非常識な……」
驚き、藍澤が呟くと、華月はちょっとむっとした表情で怒鳴りました。
*「そんなこと言われてもわかんないよ! 私も気がついてたらここにいて、こうなっちゃってたんだからっ」
「……っ…… !」
そう、藍澤がどんなに非常識だとわめきたてても、等の華月が目の前に存在しているのでは、ぐうの根も出ません。
その勝ち気な声の調子は、まさしく華月本人のものでした。
「ば……こんな……こんな馬鹿なことが、あるわけ……」
部屋の中でつったっている藍澤を尻目に、華月はせかせかと藍澤の机の上に本とテープで「自分の部屋」を作り始めます。
*「ん……まあ、とりあえずこのカッコで家に帰るわけにもいかないし……。しばらくの間、ココにお世話になるわね。よろしくー!」
「……お、おいっ!?」
*「それに、元はといえば、清の下手な自転車の運転が原因なんだし〜……。文句、ある?」
「う………」
こうして、二人の奇妙な同居生活が幕を上げました。